シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

湘南白百合学園中学校

2023年11月掲載

湘南白百合学園中学校【国語】

2023年 湘南白百合学園中学校入試問題より

次の大阪市のホームページ「『やさしい日本語』で話してみませんか?」から引用した文章、および【資料1】・【資料2】を見て、後の問1・問2にそれぞれ答えなさい。

「やさしい日本語」は、外国人の方など日本語があまり得意でない方に伝えるため、わかりやすい言葉や表現に言い換(か)えた日本語のことです。「やさしい日本語」を使えば、日本語があまり得意でない方と話すことができます。

【資料1】
「やさしい日本語」で伝えるポイント

  1. 全体的にゆっくり話し、言葉ははっきり発音する。
  2. 一文を短く、区切って話す。
  3. 難しい言葉は、簡単な言葉に言い換える。
  4. 外来語(カタカナ語)はできるだけ使わない。
  5. 曖昧(あいまい)な表現はせずに、具体的に伝える。
  6. 方言はできるだけ使わず、標準語で話す。

【資料2】

「やさしい日本語」の例
通常の日本語 やさしい日本語
「今朝はめっちゃ暑かったなぁ」 「今日の朝は とても暑かった ですね」
「土足厳禁」 「靴(くつ)を 脱(ぬ)いで ください」
「参加費は無料です」
「映画館に行くことをキャンセルします」

(問1)【資料2】の①に入る最もふさわしいものを次から選び、記号で答えなさい。
(ア)参加費は フリーです。
(イ)参加するとき お金は いりません。
(ウ)参加するとき 費用は けっこうです。

(問2)【資料2】の②に入る最もふさわしいものを次から選び、記号で答えなさい。
(ア)映画館に 行くことを 固辞します。
(イ)映画館に 行かないかも しれません。
(ウ)映画館に 行くことを やめます。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この湘南白百合学園中学校の国語の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

(問1)イ
(問2)ウ

解説

設問には「大阪市のホームページ」からの引用とあります。なぜ「大阪市」なのでしょうか。

大阪市のホームページによると、「大阪市は、およそ20人に1人が外国人住民で、政令指定都市の中で最も多い14万人を超えている」とのことです。さらに、「やさしい日本語」の「やさしい」には、「かんたんな言葉を表す『易しい』と、相手に配慮する『優しい』気持ちで話す」という二つの意味がこめられていると書かれていました。また、東京都のホームページには、「やさしい日本語」が始められるきっかけとして、1995年1月の阪神・淡路大震災で、日本語が十分に理解できずに、必要な情報を受け取ることができなかった多くの外国人がいたことが記されています。「やさしい日本語」は、災害時のみならず平時における外国人への情報提供手段としても研究され、行政情報や生活情報、毎日のニュース発信など、全国的に様々な分野で取り組みが広がっているそうです。

あらためて考えてみると、私たちがふだん特別に意識することなく使っている日本語には、「和語」「漢語」「外来語」、それらが組み合わされた「混種語」という複数の言葉がふくまれています。また、表記する文字にも、「ひらがな」「カタカナ」「漢字」「ローマ字」などがありますね。そうやって見てみると、日本語は思いのほか「複雑な言語」であり、外国人にとっては「むずかしい日本語」であると言えそうです。

辞書には「コミュニケーション」とは、「言葉、文字、身ぶりなどによって、意思、感情、思考、情報などを伝達・交換すること」などと書かれています。「言葉、文字」という語が示すように「言語」が大切なのはもちろんですが、良質なコミュニケーションのためには、言葉を受け取る相手を思いやる心が必要なことは言うまでもありません。日本語についてだけでなく、コミュニケーションのあり方を考えるのに、よいきっかけとなる問題です。

日能研がこの問題を選んだ理由

多くの子どもたちにとって、普段当たり前に使っている日本語が、実は「複雑な言語」であるということは、意識されにくいことでしょう。また、海外などで暮らした経験がない子どもたちにとっては、言葉の通じない不自由さを想像することは難しいのではないかと考えます。

子どもたちに限らず私たち大人も、普段、日本語を意識して使うという機会はあまりないのでないかと思います。ご存じのとおり日本語には、「和語」「漢語」「外来語」など複数の言葉がふくまれており、表記する文字にも、「ひらがな」「カタカナ」「漢字」「ローマ字」などがあります。子どもたちでも口にすることのある「迷惑メール」「ビニール袋」などは、それぞれ「漢語+外来語」、「外来語+和語」の組み合わせであり、「無料お試しソフト」にいたっては「漢語+和語+外来語」の三種が組み合わされた「混種語」です。さらに「パソコン」「コスパ」「IT」などといった「略語」や、「ゴールデンウィーク」「ショートコント」などの「和製外来語」も、日本語を複雑にする要因になっています。最近になって耳にする「リスケ(リ・スケジュール)」などは日本人同士でも通じないかもしれません。これらは、日本語の表現を豊かにするという利点がある反面、使い方を意識しなければ、円滑なコミュニケーションを妨げる要因にもなってしまいます。そこには、受け手である相手を思いやる心が必要になるはずです。外国人など日本語があまり得意ではない人々とコミュニケーションをとろうとする場合には、より一層の思いやりが必要になることは言うまでもありません。

この問題で取り上げられている「やさしい日本語」には、「易しい」と「優しい」という二つの意味がふくまれていることを知りました。この問題に目を向けることで、子どもたちだけでなく大人も、自分たちが特に気にすることもなく使っている日本語の難しさや、他者との良質なコミュニケーションに思いやりの心が必要なことなど、あらためて考えるよい機会になるのではないかと考えます。

在留外国人の増加ということもふくめて、これから先、より多様性が求められる社会になることを予想するのは、子どもたちにとっても難しいことではないでしょう。子どもたちが理想的なコミュニケーションを考えるきっかけとしても最良であると考え、この問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ばせていただきました。